
近年、従来の墓地埋葬に代わる選択肢として、近年注目を集めているのが海洋散骨です。海洋散骨は、遺骨を粉末状にして海に撒く方法で、故人を自然に還すという新しい形の葬送方法です。都市部での墓地不足や高額な墓地費用といった問題を背景に、海洋散骨は多くの人々にとって魅力的な選択肢となっています。環境への配慮や故人の希望を尊重するこの方法について、詳しく見ていきましょう。
散骨とは?海洋散骨の基礎知識
海洋散骨は、遺骨を海に撒くことで、自然に還すことを意味します。海洋散骨は、故人の希望を尊重し、環境に配慮した方法として多くの人に選ばれています。
海洋散骨の基本情報
海洋散骨の歴史と背景
海洋散骨は古くから行われてきましたが、現代の形で普及し始めたのは20世紀後半からです。日本では1990年代に入り、個人や専門業者によるサービスが登場し、徐々に認知度が高まりました。
背景には、都市部の墓地不足や高額な墓地費用の問題があります。
海洋散骨のメリットとデメリット
メリット- 墓地の購入や維持費がかからないため、長期的に見て経済的
- 次の世代への負担が少ない
- 本人の希望が叶えられる
- 遺族の同意: 遺族全員の理解と同意が必要です。
- 法律と規制: 法的な制約があるため、手続きが煩雑になることがあります。
- 思い出の場所の欠如: 物理的な墓地がないため、故人を偲ぶ場所がないと感じる遺族もいます。
海洋散骨の手続きと費用
ここでは、海洋散骨を行うために必要な手続きと費用について解説していきます。

必要な手続きと準備
- 遺族の合意
- 遺族と話し合い、散骨することの同意を得ることにより、後々のトラブルを避けることができます。
- 業者の選定
- 信頼できる業者を選び、サービス内容や費用を確認します。
- 粉骨作業
- 遺骨を0.2mm以下の粉末状になるように粉骨します。
- 散骨の日程と場所の決定
- 業者と相談して、散骨を行う日程と場所を決めます。天候によって予定日が変わることもあります。
- 必要な書類の準備
- 火葬許可証のコピーなどを準備します。
- 散骨セレモニーの計画
- 業者と相談して、適切な内容でセレモニーを計画します。
- 散骨の実施
- 計画に基づいて散骨を実施します。
海洋散骨の費用の目安
海洋散骨の相場はプランによって異なりますが、 費用相場の平均は5万円〜20万円程になります。
その他の詳しい散骨費用相場につきましては、コチラの記事でもご紹介しておりますのでご覧ください。
海洋散骨の法律と規制

日本における海洋散骨の法律
そもそも違法ということは「その行為を禁止している法律がある」ということになります。ここで重要になるのは、海洋散骨の違法性を問うにあたってどのような法律が関係しているのかを把握することです。 海洋散骨に関連する法律として、大きなものが2つ挙げられます。
刑法190条
(死体損壊等)
第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。
(刑法 | e-Gov法令検索より引用)
この法律においては、遺骨の「損壊」と「遺棄」について禁止しています。
そうなると、海洋散骨は遺骨を粉砕して海洋上にまくという行為になりますから、粉骨が損壊に、まく行為が遺棄に該当すると考えることが可能です。
この点については、刑法190条が保護する利益は死者に対する社会的習俗としての宗教的感情と考えられており、遺骨遺棄罪における「遺棄」とは社会通念上で埋葬とは認められない状態で放棄することであると理解されています。
つまり、社会通念上で埋葬と認められるのであれば、仮に遺骨をまいたとしてもそれが必ずしも遺骨遺棄罪に該当するわけではないのです。
平成2年、当時の法務省刑事局が「刑法第190条の規定は社会的習俗としての宗教的感情などを保護することが目的だから、葬送のための祭祀で節度をもって行われる限りは問題ない」という見解を述べたとされています。
つまり、海洋散骨が直ちに刑法190条に抵触するわけではないのです。
ただし、先ほどの話にもあった「節度をもって」という部分は重要であり、葬送のための行為であると認められなければ、刑法190条に抵触する可能性は十分にあることは念頭に置いておく必要があります。
墓地、埋葬等に関する法律第4条
第4条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
(厚生労働省より引用)
この法律では、墓地以外での埋葬を禁止しています。
もちろん海洋上は墓地ではありませんから、普通に考えると海洋散骨はこの条文に抵触することになるのです。
しかし、この法律では「埋葬」と「焼骨の埋蔵」の2つしか規制していませんので、言いかえれば「散骨は規制されていない」ということになります。
違法な行為とは、その法律の条文で禁止・規制されている行為を行うということですから、法律の条文に言及がない限りは違法性を認めることにはならないのです。
散骨が規制の対象かどうかについては、「これからの墓地等の在り方を考える懇談会報告書」という報告書に以下のような言及があります。
・散骨は墓埋法の埋葬にも埋蔵にも当たらない
・現在の墓埋法は衛生法規であり、拡大解釈して規制するのは困難
・散骨に限らず、墓埋法には火葬後の焼骨の処理方法についての規定がなく、 自宅に焼骨を保管しておくことについても規制していない
・散骨などによるトラブルが起きたときの裁判規範となるものがない。
(厚生労働省より引用)
つまり、厚生労働省によって散骨はこの法律に抵触するものではない、規制の対象外であると言及されているのです。
違法性の有無と法的リスク
海洋散骨が違法になる場合
海洋散骨が違法とされるケースは主に以下の通りです。
- 不適切な遺骨の処理: 遺骨を粉末状にせずにそのまま散骨すると、法的に廃棄物とみなされる可能性があります。遺骨は必ず細かく粉末状にする必要があります。
- 規制された海域での散骨: 漁業権が設定されている海域や海水浴場など、公衆が利用する場所での散骨は法律で禁止されています。また、沿岸近くでの散骨も環境保護の観点から制限される場合があります。
- 許可を得ずに散骨を行う: 散骨を行う際に必要な許可や手続きを怠ると、違法となります。特に、船舶を使用する場合は、海上交通に関する法律を遵守しなければなりません。
法的リスクを回避する方法
- 適切な遺骨の処理: 遺骨は専門業者に依頼して粉末状にしてもらいましょう。粉骨することで、環境への配慮がなされ、法律に適合した形で散骨が行えます。
- 適切な海域の選定: 散骨を行う海域は、漁業権や公衆利用の場所を避け、法律に基づいて指定されたエリアを選びます。信頼できる業者と相談して、安全で合法的な海域を選びましょう。
- 必要な許可の取得: 散骨を計画する際には、必要な許可や届出を適切に行います。特に船舶を使用する場合は、海上交通法に基づいた手続きを踏むことが求められます。
海洋散骨の流れ

散骨までの準備プロセス
- 事前準備: 散骨の日程と場所を確定し、必要な書類を揃える。セレモニーの内容を具体的に決め、家族や友人に通知します。
- 打ち合わせ: 散骨業者との最終的な打ち合わせを行い、当日の流れや注意事項を確認します。
- 必要な物品の準備: 散骨用の花や献花、故人を偲ぶための音楽や写真など、セレモニーに必要な物品を準備します。
海洋散骨当日の流れ
- 集合と出発: 指定された集合場所に集まり、業者の案内に従って船に乗り込みます。
- セレモニーの実施: 船上でセレモニーを行います。故人への思いを込めた音楽やスピーチ、献花などを行います。
- 散骨の実施: セレモニー終了後、遺骨を海に撒きます。この時、散骨の方法や手順について業者の指示に従います。
- 帰港と解散: 散骨が終わったら、船で帰港し、解散します。必要に応じて、家族や友人と共に故人を偲ぶ時間を過ごします。
海洋散骨の注意点とマナー
環境への配慮と注意点
海洋散骨を行う際には、環境への配慮が必要不可欠です。遺骨を粉末状にすることで、自然に還る時間を短縮し、海洋生態系への影響を最小限に抑えることができます。また、散骨用の花や紙などは自然に分解される素材を選ぶことが望ましいです。これにより、海洋環境に負担をかけずに散骨を行うことができます。
遺族への配慮とマナー
遺族の感情にも十分に配慮することが重要です。散骨の際には、遺族全員が納得し、心の準備が整っている事を確認しましょう。また、セレモニー中の服装や言動にも注意を払い、故人を敬う気持ちを一番に考え執り行うようにしましょう。そうすることによって心温まるセレモニーで故人を偲ぶことができます。
海洋散骨を検討する際のポイント
海洋散骨は、環境への配慮や経済的な理由から注目される新しい葬送方法です。海洋散骨を検討する際は、専門業者のアドバイスを受けつつ、遺族全員の合意を得て進めることが大切です。法律や規制を守りながら、故人を敬い、自然を大切にする心を持って行いましょう。
散骨の専門業者、銀河ステージでは海洋葬も行っております。故人の旅立ちを、美しい海の記憶とともに心に刻むお手伝いをさせていただきます。ご相談やお問い合わせは、気軽にどうぞ。