海洋散骨インタビュー記事

2023.09.29

コラム



日本の葬式文化は、何世代にもわたる伝統と家族の絆を大切にする独自の形を持ってきました。
しかし、時代の変遷とともに家族構造や価値観は変わりつつあり、それに伴って葬式や供養の方法にも多様性が求められるようになってきました。

一昔前には考えられなかった「散骨」や「海洋散骨」が、今では一つの選択肢として考えられるようになったのは、その象徴とも言えるでしょう。真宗大谷派(東本願寺)の寺院の副住職である先生に、この新しい葬式のかたちについて、そしてこれからの供養の在り方について伺ってみました。

インタビューの内容の前に「海洋散骨」についてご紹介します。



  海洋散骨とは

海洋散骨はご存じでしょうか


海洋散骨とは、遺骨を海洋に散布する葬儀の一形式です。故人が生前に海をこよなく愛し、死後は自然と一体になることを深く希望していた場合に、よく選ばれる方法です。

特徴的な点として、まず「納骨」ではなく「散骨」という形式を取ります。一般的には遺骨はお墓に納められるものですが、海洋散骨では遺骨を粉末状にして海に散布します。そのため、特定の場所に遺骨を納める行為は行いません。この特性から、墓標が存在しない点も挙げられます。

法的な観点から見ると、「墓地、埋葬等に関する法律」では散骨に関する明確な規定は存在せず、多くの地域で法的な制約も少ないとされています。

また、海洋散骨を選択する背景として、故人の生前の職業や趣味、そして死後の希望が大きく影響しています。特に、海や自然に対する深い愛情や希望が背景にある場合が多いです。

さらに、海洋散骨が選択される理由として、経済的な事情や墓守の不在、遺族の信念や考え方も考慮されますが、多くは故人の生前の希望によるものが大部分です。



🔷海洋散骨のメリット

海洋散骨は、人が最後の場所として選ぶ方法として注目されています。多くのメリットを持つこの葬儀方法について、詳しく見ていきましょう。

  🔹自然との一体感

死後、大自然に還るというのは古来からの人々の願いであり、海洋散骨はまさにその思いを形にする方法と言えます。大海へと還ることで、自然との調和やサイクルの一部となることができます。

  🔹故人の遺志の尊重

故人が生前に特定の方法での葬儀を望んでいた場合、その希望を叶えることは遺族にとっても大きな安堵となります。特に、海洋散骨を希望していた故人の意志を尊重することは、遺族の心の平和をもたらすことが期待されます。

  🔹子孫の負担の軽減

現代の生活スタイルや価値観の変化に伴い、家族が故郷を離れるケースも増えてきました。そのため、お墓の維持や管理の負担を子孫に掛けることなく、故人を思い出す場所を持つことができるのは、海洋散骨の大きな魅力です。

  🔹経済的な側面からのメリット

お墓の建立や維持には様々な費用が掛かりますが、海洋散骨ではそのような経済的な負担が大幅に軽減されます。墓石の費用や維持費、管理費などの心配がなく、故人を偲ぶ方法として経済的にも安心感があります。

 🔷海洋散骨のデメリット

海洋散骨は、自然への帰還という点で多くのメリットが考えられますが、同時にデメリットも存在します。以下、海洋散骨のデメリットについて詳しく解説いたします。

  🔹手元に遺骨が残らないことの寂しさ

海洋散骨を選ぶと、全ての遺骨が大海に帰るため、手元に遺骨を残すことができません。そのため、故人を偲び、手を合わせる際に、どこに向けて祈れば良いのかという疑問や寂しさを感じる遺族がいます。

  🔹お墓参りの機会の喪失

お墓参りや年忌法要は、故人を偲ぶ大切な機会となることが多いです。しかし、海洋散骨の場合、墓標が存在しないため、お墓参りや献花の機会が失われます。故人との繋がりを感じることが難しくなるという問題が考えられます。

  🔹心の拠りどころの喪失

海洋散骨後、遺族が海を故人の代わりのお墓のように感じ、故人を偲ぶことができれば良いのですが、一方で、具体的なお墓や仏壇がないため、心の拠りどころを失ってしまうと感じる遺族もいるようです。

  🔹家族や親戚の理解が必要

海洋散骨を選ぶ際、家族や親戚の理解が欠かせません。生前からの相談や理解を求めることで、故人の意志が尊重され、遺族間の摩擦や誤解を避けることができます。




  海洋散骨の流れ

海洋散骨は、故人を大海に帰す手段として選ばれることが増えています。そうした背景のもと、海洋散骨を行う際の手続きや流れについて、詳しく説明いたします。


    ①業者申し込みの手続き

まず、海洋散骨を実施している業者を選び、その業者に申し込みを行います。各業者ごとに提供するサービス内容や価格が異なるため、比較検討することが大切です。

    ②遺骨の引き渡し

次に、選ばれた業者に遺骨を引き渡します。業者が直接引き取りに訪れる場合、依頼者が業者の所在地まで持参する場合、あるいは郵送での対応となるケースが考えられます。

    ③遺骨の粉骨工程

業者は受け取った遺骨を粉骨する機械を使用して、細かいパウダー状に加工します。この加工後、一部の業者では遺族の元へ返還するサービスも提供されることがあります。

    ④散骨のための出航

散骨を行うため、選定されたポイントへ船で出航します。この時、業者によっては遺族と一緒に船上から見送るスタイルを取ることもあります。

    ⑤散骨式の実施

散骨ポイントに到着した後、遺骨を海に帰します。この際、献花や献酒、または号鐘とともに黙祷などの儀式を行う業者も存在します。


海洋散骨は、故人の最後の旅路として選ばれる方法です。適切な業者を選び、故人を感謝の気持ちで送り出すことが大切です。




新しいお葬式のかたちについて、お坊さんに質問してみた


海洋散骨の増加について

—— 今日はよろしくおねがいします。

はい、よろしくお願いします。

—— 先生は真宗大谷派(東本願寺)寺院の副住職をされていますが、『海洋散骨』はご存知ですか?

もちろんです。最近では家墓があっても納骨はしないという人もおられます。仏壇もお墓も、高齢の相続者さんが継承できずに始末するケースは増えてきているように思いますね。

—— 『墓じまい』という言葉も最近聞くようになりました。

増えていますね。ご高齢になってお墓の管理が難しい方は少なくありません。



散骨って罰当たりなのでは、と感じる日本人らしい心理


—— 散骨を検討する際、バチが当たったり悪いようになるのではと不安になる方もいます。

言ってしまえば、仏様は基本的には衆生(人間)を救うお立場です。仏罰があたるという心配はありません。

—— 最近では海洋散骨だけでなく供養もいろいろありますが、どう思われますか?

日本は『家』を中心に宗教観を養い、継承してきた歴史があります。
最近になって『宗教離れ』や『墓じまい』が話題になっていますが、これは時代の変遷によって『家族』の価値観が変化したことも大きいだろうと思います。
現代の最小単位は『家』ではなく『個』なんだとか。これからの時代、儀式・宗教のあり方はますます変わっていくと思いますよ。

—— 変わっていくと、正直お寺は大変なのでは?

それは大変ですよ。
ですが、仏教界も変容が求められる時期が来ているんでしょう。
生き方の多様性も認められる社会で、たとえばLGBTのカップルなら子供がいなくとも互いを思う気持ちで弔おうとされるでしょうし、それは事実婚の夫婦にしても同様です。
戸籍だけが「家族」を象徴するものではなくなっていく、そういう時代に応じた供養を考えることは必然だろうと、私は思いますね。

—— 宗教性よりも弔いに対する想いを尊重した供養になっていく、ということでしょうか?

そうとも言えますね。
今後の宗教は社会的な価値観や慣例に縛られず、弔う側の精神性やピュアな憶念が軸になってくるのでは。
また、海や山という自然はおおよそ無くならないでしょうから、そういう意味でも自然葬というのはある意味、回帰というか原始的な帰着点ではないでしょうかね。

散骨か納骨か

現代のお墓について〜散骨か、収骨か〜


—— お墓やお仏壇での供養は時代遅れなんでしょうか?

時代遅れ、とはもちろん思いませんし『お墓回帰』のようなリバウンドが今後無いとも言えません。
安易なムーブメントで墓仕舞いが加速することには危機感もあります。しかしながら少子高齢化でお墓の継承が難しいのも事実でしょう。
グリーフケアの観点から見た場合、お墓よりも身近な手元供養やモーニングジュエリーを心のケアに実用的に用いているケースもあります。
どちらにせよ、何らかの拠り所が必要な方はおられるわけですから、散骨などを考える際には、そういった部分もしっかり想像されるのをお勧めしますね。

—— お坊さんとして、納骨か散骨かと問われたらなんと答えられますか?

僧侶という立場からは「基本的には集団収骨を勧めますが散骨もありだと思う」と言うのが正直なところです。しかしですね、そもそも骨壺に入れて墓に納める方法は歴史から見て新しいんですよ。
土葬も含めて、自然に帰るほうが“普遍”ですからね。私は、散骨が異端な方法とはまったく思いませんよ。

—— なるほど、普遍的な方法だと。

それに供養というのは時代とセットで考えるべきで、戦国時代でも戦争中でも、時代によってはお墓がない時代もあったでしょう。亡くなった方の尊厳を保つ葬礼が大切なのであって、その形式に弔いの是非があるのではないんです。セレモニーの流れのひとつとして現代は納骨がポピュラーなだけで、これは時代と共に変わってもおかしくないんですよ。

—— 最後に、これからのお葬式のあり方についてお考えがあればお聞かせください。

今までの方法を踏襲してはいけないのではなくて、供養の尊厳を大切にして、弔う方にとっても無理のない方法を模索していただけたらと思います。
供養というのは故人と共有する想いの世界。お金をかけたから良いのでもないが、簡素だから清貧で良いのでもありません。
ある意味、家長制の時代に当然とされた家の宗教儀式は、それを縁にして親戚縁者が集う尊さもありますよね。かと思えば、現代病として家族という病を抱えている人からすれば、散骨をすることで区切りがつく場合もあるでしょう。
それがその人の救いになることもあるわけです。儀式がどう、方法論がどうではなく、ご自身を含めて弔いの想いを今一度じっくりと考える時が来ているのかもしれませんね。

—— 今日はありがとうございました。

はい、ありがとうございました。


円受寺 副住職 松本曜一氏


障害者福祉事業、外来専門の医院経営を経て有馬温泉病院の役員を勤める。
その後、真宗大谷派にて僧籍を取得。現在、副住職の傍ら、一般社団法人ビハーラ21福祉事業協会にて理事を勤める。

住職

まとめ

海洋散骨のすそ野が広がってきてはいますが、まだ全ての人にとって馴染み深い葬送の方法とは言えません。故人をどのように見送るかは非常に重要な選択であり、選択には故人の願い、遺族の気持ちや状況、さらには周囲の環境など、様々な要素が影響します。

海洋散骨は、多様な葬送方法の中の一つに過ぎません。故人を心から尊重し、遺族が心から納得し、感謝の気持ちで見送ることができるかどうかが、最も大切な点となります。

選択する方法が海洋散骨である場合、その選択が最良であると感じられるよう、遺族や親族との十分な話し合いを持つのがおすすめですよ。

海洋散骨のコラム

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